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マーチャント, ストーリー

老舗ベーカリーがデリバリーを始めたら売り上げだけではないプラスの影響あり

9月30日 / 日本
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トーホーベーカリー
松井成和氏

東京・三鷹市で 70 年以上パンを作り続けている「トーホーベーカリー」。1 番人気商品の「GOLD 塩バターロール」は、1 人 5 個までと購入制限があるのにも関わらず、1 日 1,000 個以上売れる看板商品となっています。
ヒット商品が誕生したきっかけ、そして実店舗での販売とデリバリーへの注文対応をどのように両立しているのかなど、3 代目店主である松井成和氏にお話を聞いてきました。

1.創業 70 年超とのことですが、昔からのレシピで作り続けているパンはありますか?

おそらく、食パンやクリームパン、カレーパンなどは創業当時からあったと思いますが、パンの中身は父や祖父の作っていたものとは全く違います。当店は「昔ながらのパン」をうたい文句に、昭和のぬくもりを残しつつ、新作パン作りにも意欲的に取り組んでいます。人気パンの一つである「自家製サクサクカレーパン」は、一見普通のカレーパンに見えますが、「カレーパングランプリ」※を 2017 年から 6 年連続受賞するなど、そのおいしさは食べてもらえば分かるものだと自負しています。 

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クリームパンも中身のクリームは毎日手炊き、バニラビーンズもふんだんに入れてしっかりとした、高級感のある味を作り出しています。それぞれのパンにこだわりがあるんですよ。それでも、 1 個 100 円台のものなど、お客さまに手頃な価格だと思っていただけるように、できるだけ頑張っていますね。ある程度金額が高くなる商品もありますが、そこはメリハリをつけてやっています。

※カレーパングランプリとは、「いま1番おいしいカレーパンはどれだ?」を合言葉に日本カレーパン協会によって開催されるカレーパングランプリです。

2.看板商品である「GOLD 塩バターロール」が誕生したきっかけを教えてください。

今から 11 年ほど前に、愛媛県にある塩パン発祥の店に、同業者 10 人くらいで視察に行ったことがきっかけですね。その際にお店の方と話す機会もあったのですが、さすがに作り方までは聞けない。けれど、同業者、パンのプロの皆さんと一緒に行ったので、東京に戻るまでの間に、こうしたら、ああしたらなどと話しているうちに大まかなレシピが完成しました。ただ、いざ作り始めてみるとそう簡単にはうまくいかない。近いものはできるし、おいしいけれど何か違う。粉やバターなどの素材、配合や作り方など試行錯誤した結果、開発に 1 か月以上かかりましたね。
 

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見た目は普通のバターロールと何ら変わらない、ちょっと形がいびつかな?というパンです。まずは食べてもらわなくてはお客さまに伝わらないと思い、焼いたうちの 2/3 ほどを試食に回し、残りの 1/3 程度を販売している状態でした。それを 1 か月、 2 か月と続けているうちに、試食の数が少しずつ減って売れる数が増えていきました。それと同時に作る量も増えていき、1 日 100 個だったのが 200〜300 個、500 個となっていき、そのうちあれよあれよという間に 1 日 1,000 個を超えました。それまで人気 No.1 だったクリームパンやカレーパンの販売数を一気に超えて、パンを作る体制が変わりました。

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3.店舗が忙しい時間帯に、デリバリーの注文が重なることもあるかと思います。店舗での販売とデリバリーへの注文対応は、どのように両立されていますか?

店舗に関しては 11〜13 時に 1 回目の混雑ピーク、そして夕方の 17 時以降に 2 回目のピークがきますね。Uber Eats のオーダーもその時間に入ってくることが多いのですが、当店はレジ担当者はデリバリー対応していません。商品を並べる、いわゆる品出し担当でもある販売スタッフがデリバリーの担当をしています。焼きたてのパンを店頭に出しつつ、Uber Eats のオーダーが入ればそれを優先するような流れですね。そして、デリバリーでオーダーいただいた商品の引き渡しは、店頭やレジではなく、パンを作っている工場(調理場)の方で行っています。実店舗での販売とデリバリーのオーダーが重なっても動線が違うため、店舗に買いに来た方をお待たせするようなことはないんですよ。

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4.Uber Eats を始めたことにより、お店としてどのような変化がありましたか?

やはり、Uber Eats は何というか、店にいいイメージを持たせられる。「今」を知っている、みたいな感じがするというか。店の入り口に緑色のシール(Uber Eats 加盟店のステッカー)が貼ってあるというのは、店の付加価値にもなる。こういうことに賛同しているお店だということをお客さまにアピールできる。店自体が、柔軟性があるというか、「これもやっているんだ」と思っていただけるインパクトがありますよね。あとは混雑している際、もしかしたらですけど、このシールを見て、今後はデリバリーで購入しようと思ってくれるお客さまがいれば、それはいいことだなと思います。
あとは、スタッフのモチベーションが上がりますね。スタッフは若い子、学生さんも多いので、Uber Eats をやっているお店で働いている、というだけで何かモチベーションになる面があります。そして、実店舗での販売プラス、デリバリーの注文となれば店に活気が生まれる。現場のモチベーションが上がる。忙しくなることに伴い、それならどうしたらいいのかを考えて、新しいものを構築させるきっかけにもなる。
70 年を超えるベーカリーで、経営者はだいぶおじさんですけれど(笑)、新しいものを取り入れるのは嫌いじゃないし積極的にやる方だと思うんですね。だから新しいことは今後も柔軟に考えていきたいと思います。
同業者から「パン屋さんで Uber Eats はどうなの?」とよく聞かれますが、その度に「売れるよ。なんでやらないの?」と答えています。 Uber Eats での販路は、店の販路とは違うところにあり、その方たちが店にくるきっかけにもなる。「店の存在は知っていたけど、Uber Eats で頼んで、おいしかったから来ました」と言っていただくことにつながるなど、さまざまな形でプラスアルファになる。素晴らしいアシストになっています。デリバリーでの売り上げの割合が、月で換算すれば結構な金額になっていると考えれば、 Uber Eats は店としてやるべきことの一つだと思いますね。

5.今後の展望を聞かせてください。

まずはお客さまにストレスフリーで買っていただける場所を提供したいですね。そのために環境をいろいろと整えられたらいいなと思っています。それと同時に、 Uber Eats の配達パートナーの方たちへの商品引き渡しをよりスムーズにできればと考えています。今、商品の引き渡しを行っているのが、路地に入った工場(調理場)の出入り口で、担当スタッフが不在の時には工場(調理場)の職人が引き渡しをすることになっています。そのやり取りによって、職人が行ったり来たりしたり、対応するごとに手を洗うことになったり、時と場合によっては職人の手を煩わせてしまう場合があるので、それを解消したいと考えています。小さなカフェを作り、そこでお客さまがコーヒーなどを飲んで過ごしていただくのが理想ですが、Uber Eats 用の窓口も作り、デリバリー商品の受け渡しをスムーズにできたらいいなと思っています。お客さまだけではなく、工場(調理場)の職人たちもストレフリーで働ける環境になればいいなと考えております。

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まとめ

「トーホーベーカリー」では、店頭やレジではなく、工場(調理場)の方で商品の引き渡しを行うことにより、実店舗での混雑を回避されているとのこと。実店舗とデリバリーの両立において、そのような細やかな工夫の大切さを改めて感じました。Uber Eats を始めたことにより、新しい販路の開拓、店における活気創出、若いスタッフのモチベーションアップなどといった、さまざまな副次的効果も生まれ、経営のプラスになっているとのことです。
70 年以上続く老舗企業ながらも、その伝統を守りつつ新しいことを意欲的に取り入れようとする柔軟な姿勢こそが、ヒット商品を生み出す秘訣なのかもしれません。

投稿者: Azusa Miura

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