(本ブログポストは、8月23日にフィリピンのInquirerに掲載されたオプエドの抄訳です)

私が少年時代を過ごした
1980年代の思い出の一つに、永遠に終わらない交通渋滞というものがあります。悲しいことに、この「カーマゲドン* (Carmageddon)」は今も都市に影響を与える元凶となっています。ロサンゼルスの人は、毎年 10 日間まるまる渋滞の中で過ごすという無駄な時間を過ごしています。さらに悪いことには、マニラのような急発展する大都市では、それが人生の一部となっていることです。

いくつかの報告によると、マニラは地球上で最もひどい交通渋滞が発生する街であり、この交通渋滞によって1日に300万ペソ (約660万円) もの生産性を失っていると算出されています。当然のように、ドゥテルテ大統領が最近行った一般教書演説で、この問題をフィリピンが直面する大きな課題の一つに挙げていました。フィリピンはアジアで最も急速に成長している国の一つでありながら、この交通問題はその成長を止めかねないからです。

あらゆるアイディアがこの危機を解決するために提唱されてきました。道路を作ることや、2台目に所有する車に高い税金をかけること、政府機能を首都の外に置くことなどです。しかし、即効性の高い解決策はすでに存在しています。それはすでに皆さんがお持ちのスマートフォンという技術を使って、より多くの乗客をより少ない台数の車で運ぶことです。ロサンゼルスやマニラのような巨大都市すべてで活用できる方法であり、政府は新たに資金をねん出する必要はありません。

もちろん、相乗りは決して目新しい考え方ではありません。政策に関わる人たちは、何十年にもわたってこの課題について議論してきました。しかし、スマートフォンの出現までは、信頼性と安全性を確保した形で、同じ時に同じ方向に行く乗客をマッチングさせることは事実上不可能でした。今はUber のようなアプリが、ボタンを押すことでそれを可能にしており、また、実質当社の uberPOOL (読み:ウーバープール)サービスは、世界の大都市においてそれを実証してきました。

私が生まれ育ったロサンゼルスでは、uberPOOL 開始後7か月間で、790万マイル (約1.27億キロ) の運転距離と1400立方トンの二酸化炭素の排出量を削減しました。マニラでは、6月にサービスを開始して以降、73千人以上が相乗りサービスを選択しており、その数は飛躍的に増えています。開始してたった2か月で、578000キロ の運転距離、つまりは 27,200リッター の燃料と 64,000キロの二酸化炭素の排出量を削減しました。

現在、我々にはテクノロジーがあります。今我々に必要なのは、皆が相乗りできる、時流に合った適正な規制です。昨年、フィリピンは国レベルでライドシェアを認める法案が通過した世界初の国になりました。これはとてつもない進歩です。しかし、マニラのすべての乗車をライドシェアに変えるには、なすべきことはまだ沢山あります。現時点で Uber を使った交通量は首都全体の1パーセントにも満たない状況です。それでいてこのサービスを活用したい新規ドライバーは、許可を申請することができなくなってしまいました。これは、フィリピンの皆さんが相乗りしたくてもできないということを示します。

運転する皆さんが、他の市民に乗車を簡単に提供できるようになることで、マニラにある250万台もの車を問題の元凶としてではなく、ソリューションに変えることができるのです。不思議な感じに聞こえるかもしれませんが、「カーマゲドン」に対する最良のソリューションは、車を問題扱いするのではなく、もっと有効に活用することなのです。

この過程において、交通費も削減することができます。ある研究によると、安価で信頼性のある交通サービスが利用できるようになることで、人々は貧困から抜け出すことができるとの結果が出ています。ドライバーにとって、ライドシェアはボタンを押すだけで更に収入を得ることができ、最も高価な経費の一つである車を経済的な資産に変えることができます。また、ライドシェアに乗車することが、カギや目的地までのルート、駐車スペースを探すよりも安く、簡単にできるようになるのですから、なぜわざわざ車を所有する必要があるのでしょうか。駐車場や渋滞で出来上がったような都市も違った世界が見えてきます。ただ、これには皆さんの協力が必要なのです。

*カーアクションゲーム